eラーニングは助成金の対象になるのか|「経費だけ」「サブスクは別コース」という2つの落とし穴
eラーニングはOFF-JTとして人材開発支援助成金の対象になり得ますが、賃金助成は対象外で経費助成のみです。また買い切り型と定額制(サブスク型)では使うコースが変わります。2026年8月時点の要件を整理しました。

この記事でわかること
- eラーニングはOFF-JTとして対象になり得るが、賃金助成は対象外で経費助成のみ。集合研修と同じ感覚で試算すると助成額がずれる
- 対象外になるのは職務に直接関連しない内容・接遇やマナーなどの共通スキル・趣味教養・法令で義務付けられた講習
- 買い切り型と定額制(サブスク型)で使うコースが違う。サブスクは人材育成支援コースでは対象外で、人への投資促進コースの「定額制訓練」を使う
- 定額制訓練は経費助成60%(中小)、1人1か月2万円が上限。2026年4月8日以降は1人あたり10時間以上の修了が必要
「集合研修だと現場を止めてしまうので、eラーニングで済ませたい」——AI研修のご相談で、これは本当によく出てくる話です。実際、交代制の職場や多拠点の会社では現実的な選択だと思います。
ただ、助成金を前提に考えているなら、先に知っておいたほうがいい落とし穴が2つあります。「思ったより戻ってこない」のと、「申請するコースが違う」。この記事では2026年8月時点の要件を整理します。
結論:対象になる。ただし経費助成だけ
まず前提から。eラーニングは実業務とは切り離された学習なので、OFF-JT(通常の業務から離れて行う訓練)の一つとして扱われます。つまり助成の対象になり得ます。ここは問題ありません。
問題は次です。eラーニング・通信制による訓練は、経費助成のみで賃金助成は対象外とされています。
| 経費助成(受講料など) | 賃金助成(訓練中の賃金) | |
|---|---|---|
| 集合研修・オンライン集合研修 | 対象 | 対象 |
| eラーニング・通信制 | 対象 | 対象外 |
これを知らずに試算すると、金額がずれます。以前賃金助成の計算方法と対象になる時間で書いたとおり、賃金助成は「単価×実訓練時間×人数」で積み上がるので、10名・12時間の研修なら十数万円になる規模です。それが丸ごと乗らない。
とはいえ、これは制度の理屈としては分かる話でもあります。eラーニングは業務の合間に各自のペースで進めることが多く、「この時間、確かに訓練を受けていた」を賃金と紐づけて証明しにくい。証明できないものには出せない、というだけの話だと理解しています。
対象にならないeラーニングもある
形式がeラーニングかどうか以前に、内容で落ちるパターンがあります。
- 職務に直接関連しない訓練
- 接遇やマナー講習など、職種を問わない共通スキルの訓練
- 趣味・教養を目的とするもの
- 法令等で実施が義務付けられている講習
AI研修に引き寄せると、1つ目と2つ目が効いてきます。汎用的な「生成AI入門」を全社員に配る形は、まさにこの領域に入りやすい。
しかもこの判定は、2026年8月3日の改正でさらに厳しくなりました。詳しくはリスキリング助成金の対象が厳しくなったにまとめましたが、研修名ではなく「対象者の職務に直接必要か」で見られます。eラーニングは「全員に同じものを配れる」のが利点なだけに、この改正とは相性が悪いところがあります。
あわせて、事業展開等リスキリング支援コースでは同一労働者・同一年度につきeラーニングは1回まで、経費助成上限は1人1訓練あたり15万円(中小企業)とされています。
買い切り型か、サブスク型か——ここでコースが分かれる
もう一つの落とし穴がこちらです。同じ「eラーニング」でも、課金の形によって申請するコースが変わります。
- 買い切り型(このコースを何名分、と特定できるもの)→ 通常の訓練として申請
- 定額制・サブスク型(学び放題。1訓練あたりの経費が特定できないもの)→ 人材育成支援コースでは対象外
定額制サービスが弾かれるのは、制度が「1訓練いくら」で経費を捉えているからです。学び放題は、その前提に乗りません。
ではサブスクは使えないのかというと、そうではなく、「人への投資促進コース」の「定額制訓練」という専用の区分が用意されています。定額制訓練とは、1訓練当たりの対象経費が明確でなく、同額で複数の訓練を受けられるeラーニングおよび同時双方向型の通信訓練を指すとされています。
| 項目 | 定額制訓練(人への投資促進コース) |
|---|---|
| 経費助成率 | 中小企業60%/大企業45%(賃金要件等を満たすと15%加算) |
| 上限 | 従業員1人あたり1か月2万円 |
| 年度上限 | 人への投資促進コース全体で1事業者1年度あたり2,500万円 |
| 対象経費 | 定額制訓練の基本料金。初期設定費用・アカウント料・管理者ID付与料金・修了証発行などのオプション料金も含む |
「1人1か月2万円まで」という上限は、実務でけっこう効きます。1人あたり月3,000円程度のサービスなら余裕ですが、高単価のサービスを少人数で使う場合は上限に当たります。
定額制訓練は2026年4月に要件が変わった
ここも押さえておいてください。2026年4月8日以降、受講者全員の合計時間数ではなく、1人あたり10時間以上の修了が必要になりました。厚労省のパンフレット(令和8年8月3日版)の文言はこうです。
修了した訓練の標準学習時間が、支給申請時において合計10時間以上であること(10時間要件)としました。そのため、修了した訓練の標準学習時間が10時間未満の者については、支給対象外となります。
——出典:厚生労働省「人への投資促進コースのご案内(詳細版・令和8年8月3日版)」(PDF)(2026年8月16日閲覧)
これは地味に厳しい変更です。以前なら「熱心な数名がたくさん受講したので、合計時間は満たしている」という組み方ができました。今は一人ひとりが10時間受け切る必要があります。
サブスク型の学び放題は、配った後の受講率が読めないのが常です。配って終わりにすると、この10時間に届かない人が出る。申し込みより、その後の受講管理のほうが山場になったと考えたほうがいいと思います。
eラーニングを助成金前提で選ぶときの確認事項
まとめとして、研修会社やサービスに聞くべきことを並べます。
- 課金形態は買い切りか定額制か(申請するコースが変わります)
- 受講記録は出せるか(誰がいつ何時間受けたかを証明できる形か)
- 修了要件はどう設定されているか(1人10時間以上を満たせる構成か)
- カリキュラムは対象者の職務に接続しているか(汎用的な内容だけでは危うい)
- 助成金の申請サポートはあるか(書類の負担は決して軽くありません)
2つ目は特に重要です。受講ログが取れないサービスだと、実施したことを証明できません。
そして最後にもう一度。訓練開始前の計画届が必要で、要件を満たしていても審査があり、受給が保証されるものではありません。 本記事は2026年8月時点で確認できた情報に基づくもので、コースごとの細かい要件は改正が続いています。申請前には必ず厚生労働省の公式資料と管轄の労働局でご確認ください。
個人的には、eラーニングは「知識の底上げ」には向く一方、業務に接続する部分は集合研修やワークショップで補うほうが結果が出やすいと感じています。助成金の設計も、なんだかんだでその方向に寄っている気がします。当社のAI研修では、そのあたりの組み合わせも含めてご相談を承っています。
出典(2026年8月時点。要件・助成率は変更される場合があります。申請前に必ず公式情報および管轄の労働局にご確認ください)
よくある質問
- eラーニングは人材開発支援助成金の対象になりますか?
- 対象になり得ます。eラーニングは実業務と切り離された学習のためOFF-JTとして扱われます。ただし経費助成のみで、訓練中の賃金に対する助成は対象外とされています。
- なぜeラーニングは賃金助成が出ないのですか?
- eラーニング・通信制による訓練は経費助成のみという整理になっているためです。集合研修と同じ感覚で「経費+賃金」で試算すると、実際の助成額と差が出ます。
- サブスク型の学び放題サービスも対象になりますか?
- 人材育成支援コースでは定額制サービスは対象外とされています。「人への投資促進コース」の定額制訓練という区分で申請する形になり、経費助成は中小企業で60%、1人1か月2万円が上限です。
- 定額制訓練の要件で2026年に変わった点はありますか?
- 2026年4月8日以降、受講者全員の合計時間数ではなく、1人あたり10時間以上の修了が必要になったとされています。人数でまとめて時間数を満たす組み方はできません。
- どんなeラーニングなら対象外になりますか?
- 職務に直接関連しない内容、接遇やマナーなど職種を問わない共通スキル、趣味教養を目的とするもの、法令等で実施が義務付けられている講習は対象外とされています。