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助成金制度時事

【2026年8月3日改正】リスキリング助成金の対象が厳しくなった|「AI研修」という名前だけでは通らない

人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」の支給要領が2026年8月3日に改正されました。対象訓練の厳格化とeラーニングの年1回制限という2点の変更が、これからAI研修を計画する企業にどう影響するかを整理します。

佐野 泰規佐野 泰規株式会社Stella Creation 代表取締役9分で読めます
プロジェクタースクリーンのある研修会場
Pexels / Pavel Danilyuk

この記事でわかること

  • 2026年8月3日、事業展開等リスキリング支援コースの支給要領が改正。変更点は「対象訓練の厳格化」と「eラーニングの同一労働者・年度1回制限」の2つ
  • 研修名に「AI」「DX」と入っているだけでは足りず、対象者の特定の職務に直接必要かで判断される
  • 同じ研修でも対象者の職務によって可否が分かれる。全社員一律の生成AI基礎研修は組み方に注意が必要
  • 経過措置があるため、進行中の計画は自己判断せず管轄の労働局に確認するのが確実

2026年8月15日時点の情報です。 人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」の支給要領が、2026年(令和8年)8月3日に改正されました。助成率75%と水準が高く、AI研修の財源として真っ先に名前が挙がるコースです。当社もAI研修を提供している立場なので、正直に言えばこの改正は他人事ではありません。研修を売る側としては少し書きにくい内容も含みますが、これから研修を計画する会社に直接影響する話なので、現時点で分かっていることを整理しておきます。

変わったのは2点

改正内容は次の2つです。

変更点内容
対象とならない訓練の厳格化職務との直結性がより厳しく見られるようになった
eラーニングの回数制限同一労働者・同一年度につき、eラーニングによる訓練は1回までに制限

厚生労働省が変更点を1枚にまとめたリーフレットを出しているので、そのまま載せておきます。具体例まで書かれていて、正直これがいちばん分かりやすい資料です。

人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正 令和8年8月3日からの変更点について(厚生労働省リーフレット)

出典:厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正 令和8年8月3日からの変更点について」(PDF)を画像化して掲載(2026年8月15日閲覧)

どちらも「使いにくくなった」という話です。ただ、率直に言うと意外ではありませんでした。2026年2月には191事業所・約20億円規模の不正受給が公表されています。ああいう数字が出た後の制度は、まず間違いなく運用が締まります。今回もその流れの中の改正だと見ています。

変更1:判断されるのは「研修名」ではなく「職務との直結性」

実務への影響が大きいのは、圧倒的にこちらです。

改正後は、研修名に「AI」「DX」「GX」と入っているだけでは通りません。見られるのは中身と対象者です。対象労働者の特定の職務に直接必要な内容で、訓練後の業務で具体的に活用できる知識・技能か——判断基準はここに尽きます。

対象外として整理されているのは、次の2類型です。

  • 職業または職務に「間接的に」必要となる知識・技能を習得させる内容
  • 職業または職務の種類を問わず、職業人として共通して必要な内容

先ほどのリーフレットの文言をそのまま引くと、対象外はこう定義されています。

○職業、または職務に間接的に必要となる知識・技能を習得させる内容のもの ○職業、または職務の種類を問わず、職業人として共通して必要なるもの

——出典:厚生労働省リーフレット「令和8年8月3日からの変更点について」(PDF)(2026年8月15日閲覧)

生成AI研修の「対象/対象外」の公式な例がある

ありがたいことに、リーフレットには生成AI研修の例がそのまま載っています。これが実務では一番参考になります。

  • 助成対象:生成AIを活用して商品提案書の構成案作成・文章生成・修正方法を学ぶ営業担当者向けの訓練(営業担当者の具体的な業務に直結しており、そのまま活用可能な内容であるため)
  • 助成対象外:生成AIを利用するための汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練(特定の業務への具体的適用を伴わない汎用的内容であるため)

同じ「生成AI研修」でも、ここまではっきり線が引かれています。全社員を集めて「生成AIの基礎と活用法」を一律にやる形は前者になりにくく、経理担当者に請求書処理でのAI活用を教えるような形なら説明が立つ。同じ予算・同じ時間数でも、設計次第で扱いが変わるということです。

もう一つ、訓練内容に沿って対象労働者を選定しているかも見られます。リーフレットの例では、CO2排出量算定を学ぶ訓練でも、その業務を担当する者が対象なら助成対象、人事や営業の従事者を対象にすると対象外とされています。

実務でどう設計を変えるか

では、どう組み立てれば通る形になるのか。当社が研修のご相談を受けるときの考え方も踏まえて書くと、順序はこうなります。

  1. 対象者を職務で絞る。 「全社員」ではなく「経理3名・受発注担当4名」のように、職務単位で切る
  2. カリキュラムをその職務の業務に接続する。 汎用的な操作説明ではなく、その部署が実際に扱う書類・データを題材にする
  3. 「訓練後にどの業務でどう使うか」を言語化する。 計画届に書けるレベルまで具体化しておく

3つ目が肝心です。説明できない研修は、内容が良くても通らない構造になった——そう考えておくのが安全です。ただ、これを嫌な変更かというと、私はそうでもないと思っています。「訓練後にどの業務でどう使うか」を言語化する作業は、助成金と関係なく研修の質そのものを上げるからです。当社でカリキュラムを設計するときも、結局ここに一番時間をかけます。

なお、助成金が不支給になる理由と回避策で書いたとおり、支給・不支給の審査は支給申請時に一括して行われます。計画届を出した時点では判断されないため、「出せたから大丈夫」とは考えないでください。

変更2:eラーニングは年1回まで

もう一つが、eラーニングの受講回数制限です。リーフレットの文言はこうです。

本コースで助成が受けられる訓練の受講回数は、同一の労働者に対して一の年度で3回までですが、このうちeラーニングによる訓練の場合は、同一の労働者に対して一の年度で1回までとなります

——出典:厚生労働省リーフレット「令和8年8月3日からの変更点について」(PDF)(2026年8月15日閲覧)

ポイントは、会社単位ではなく労働者単位の数え方だということ。コース全体では同一労働者・同一年度で3回まで受けられますが、eラーニングはそのうち1回だけです。複数の実施方法を組み合わせた訓練(通学+eラーニング等)もこの「eラーニング1回」に含まれるとされています。社労士事務所の解説(DHorse社会保険労務士事務所)も同じ整理です。

あわせて、2026年4月の改正で**eラーニング・通信制の訓練は1人1訓練あたりの経費助成上限が15万円(中小企業)・10万円(大企業)**とされています。

この2つを合わせると、「必要になるたびにeラーニングを買い足し、その都度申請する」という運用は成立しないことになります。eラーニングを使うなら、年度の初めに「誰に・何を・どこまで」を決めて1回にまとめる設計が前提です。

経過措置があるので、進行中の案件は確認を

進行中の計画がある場合、ここが重要です。

計画届の提出日が2026年8月3日以降であっても、経過措置が適用される場合は従前の支給要領が適用されるとされています。つまり、改正前後のどちらの基準で見られるかはケースによって分かれます。

ここは自社で判断しないでください。管轄の労働局に個別に確認するのが確実です。 「たぶん経過措置だろう」で進めて後から覆ると、研修費を払い終えた後に不支給が決まる——という最悪の順序になります。私なら、この確認だけは後回しにせず電話でやります。

この先の見通し

もう一点、押さえておくべき前提があります。このコースは令和4年度から令和8年度までの時限措置であり、令和9年度以降の継続は未定とされています。

つまり今年度は、「助成率が高いコースを使える最後の年度になる可能性がある」一方で、「対象判定は厳しくなった」という状態です。使うつもりがあるなら、設計を丁寧にしたうえで年度内に動くのが現実的な判断になります。日程の逆算は訓練計画届はいつまでに出す?にまとめています。

最後に、制度の性質として繰り返します。訓練開始前の計画届が必要で、要件を満たしていても審査があり、受給が保証されるものではありません。 本記事は2026年8月15日時点で確認できた情報に基づくものです。改正の詳細と経過措置の適用範囲は、必ず厚生労働省の公式資料と管轄の労働局でご確認ください。

当社のAI研修では、対象者の職務に合わせたカリキュラム設計からご相談を承っています。「この内容で職務直結性を説明できるか」という段階の確認でも構いません。


出典(2026年8月15日時点。改正内容・経過措置の適用は個別判断となるため、必ず公式情報および管轄の労働局にご確認ください)

よくある質問

2026年8月3日の改正で何が変わりましたか?
人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」の支給要領が改正され、「対象とならない訓練の厳格化」と「通常のeラーニング(単発コース購入型)の年間申請回数を年1回に制限」の2点が変更されたとされています。
研修名に「AI研修」と付ければ対象になりますか?
なりません。改正後は、対象労働者の特定の職務に直接必要で、訓練後の業務で具体的に活用できる知識・技能かどうかで判断されるとされています。名称ではなく中身と対象者で見られます。
全社員向けの生成AI基礎研修は対象外ですか?
職種を問わず共通して必要な内容は対象外とされているため、全社員一律の一般的な内容だけでは対象になりにくいと考えられます。対象者を職務で絞り、その業務にどう使うかまで設計することが重要です。
すでに計画中の研修はどうなりますか?
経過措置が適用される場合は従前の支給要領が適用されるとされています。計画届の提出日が8月3日以降でも扱いが分かれるため、自己判断せず管轄の労働局に確認してください。
eラーニングの制限とは具体的に何ですか?
通常のeラーニング(単発コース購入型)について、同一の労働者が助成を受けられる回数が原則1年度1回までに制限されたとされています。必要なコースを都度買い足していくような運用は想定されていません。

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