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賃金助成の計算方法と対象になる時間【2026年8月時点】研修時間のどこが助成されるのか

人材開発支援助成金の賃金助成は「1人1コース1時間あたり」の単価×実訓練時間で決まります。休憩・移動時間の扱い、所定労働時間外の研修が対象外になる理由、加算要件の狙い方を計算例つきで解説します。

佐野 泰規佐野 泰規株式会社Stella Creation 代表取締役6分で読めます

この記事でわかること

  • 賃金助成は経費助成とは別の2階部分。単価×実訓練時間×人数で決まり、単価はコースと企業規模によって変わる
  • 休憩時間・移動時間・助成対象外のカリキュラムは訓練時間から除かれる。研修の拘束時間がそのまま助成対象になるわけではない
  • 所定労働時間外にずれた研修は原則として賃金助成の対象外。夜間・休日開催を選ぶと助成額が減ることがある
  • 賃金要件・資格等手当要件を満たすと賃金助成が1時間あたり200円上乗せされ、経費助成率も上乗せされる

助成金の試算をするとき、多くの人が経費助成(受講料の何%が戻るか)だけを見ます。しかし人材開発支援助成金にはもう一つ、訓練中の賃金に対する助成があります。金額は小さめですが、計算を誤ると申請額がずれ、書類の差し戻し原因にもなる部分です。この記事では、賃金助成の計算方法と「どの時間が対象になるのか」を整理します。制度の内容は2026年8月時点のものです。

賃金助成は「2階部分」

人材開発支援助成金の助成は2階建てです。

  • 1階:経費助成 — 受講料・教材費など、訓練にかかった経費の一定割合
  • 2階:賃金助成 — 訓練を受けている間に支払った賃金に対する助成

賃金助成は**「1人1コース1時間あたり」の定額**で計算します。時給の実額に連動するのではなく、決められた単価が適用される仕組みです。

単価はコースと企業規模で変わります。たとえば事業展開等リスキリング支援コースでは、中小企業が1人1時間あたり1,000円、大企業が500円とされています。単価は年度やコースの改定で変わるため、申請前に必ず最新の公式資料で確認してください。

対象になる時間、ならない時間

ここが本題です。研修の拘束時間がそのまま助成対象になるわけではありません。

制度上、次の2つの用語が使い分けられています。

用語中身
総訓練時間数食事などの休憩時間を除いた訓練時間
実訓練時間数総訓練時間数から、移動時間や助成対象外のカリキュラム時間を除いたもの

助成の計算に使うのは実訓練時間数です。つまり、次のものは落ちていきます。

  • 昼休みなどの休憩時間
  • 会場までの移動時間
  • 助成対象にならないカリキュラム部分(懇親会、自社の業務説明など)

「10時から17時まで研修だから7時間」ではありません。昼休み1時間を挟むなら6時間、そこに対象外のプログラムがあればさらに減ります。研修会社から受け取るカリキュラムに、休憩と対象外パートが明示されているかを確認してください。

見落としやすい落とし穴:所定労働時間外の研修

実務でいちばん影響が大きいのがこれです。

訓練の時間帯が通常の所定労働時間からずれる場合、原則として所定労働時間外に行われた訓練は賃金助成の対象外となり、その分は算定から除外されます。

具体的に言うと、こういうケースです。

  • 所定労働時間が9時〜18時の会社で、19時から2時間の研修を実施した → その2時間は原則対象外
  • 土曜日に研修を実施した(所定休日) → 原則対象外

「現場を止めたくないから業務時間外にやろう」という判断は、現場運営としては合理的でも、賃金助成の観点では不利に働きます。あらかじめ所定労働時間そのものを変更し書面で通知しているなど例外的な扱いもあるとされていますが、これは自己判断せず労働局に確認すべき領域です。

日程を決める前にこの点を知っているかどうかで、受け取れる金額が変わります。

計算してみる

中小企業が事業展開等リスキリング支援コースを使い、10名に対して全12時間の生成AI研修を実施したケースで考えます(単価1,000円と仮定)。

1,000円 × 12時間 × 10名 = 12万円

金額としては経費助成より小さく見えますが、申請の手間は同じ書類の中で完結するため、取らない理由はありません。なお、経費助成と合わせた全体像はAI研修に人材開発支援助成金は使える?で試算しています。

助成される時間には上限もあります。1人1訓練あたり1,200時間(専門実践教育訓練は1,600時間)が限度とされていますが、数日で終わるAI研修でこの上限に届くことはまずありません。実務で効いてくるのは上限より、前章の「対象になる時間」のほうです。

加算要件を狙うかどうか

助成額を上乗せする仕組みもあります。次のいずれかを満たすと、賃金助成が1時間あたり200円上乗せされ、経費助成率にも上乗せがあります(人材育成支援コースでは経費助成率15%の上乗せとされています)。

  • 賃金要件 — 訓練修了後に、対象者の賃金を5%以上引き上げる
  • 資格等手当要件 — 訓練に関連する資格手当などを就業規則等に新設・拡充し、賃金を3%以上引き上げる

魅力的に見えますが、冷静に判断してください。賃上げは一度やれば毎年続く固定費です。1回の研修で上乗せされる助成額と、恒久的な人件費増を比べると、割に合わないこともあります。

逆に「どのみち賃上げを予定していた」「AIスキルを手当として制度化したかった」という会社にとっては、タイミングを合わせるだけで得られる上乗せです。助成金のために賃上げするのではなく、賃上げの予定に助成金を合わせる——この順番が健全です。

つまずきやすい3点

最後に、賃金助成まわりで実際に問題になりやすい点を挙げます。

  1. カリキュラムに休憩が書かれていない。 何時間が実訓練時間なのか証明できず、差し戻しの原因になります。
  2. 受講者が遅刻・早退した。 その分は実訓練時間から外れます。総訓練時間の8割以上という修了要件にも関わるため、記録は正確に残してください。
  3. 賃金台帳・出勤簿と突き合わない。 研修日に「通常勤務」として記録されていると、実態と書類が食い違います。

不支給になりやすいポイント全般は助成金が不支給になる理由と回避策にまとめました。

なお繰り返しになりますが、訓練開始前の計画届が必要で、要件を満たしていても審査があり、受給が保証されるものではありません。 単価や要件は年度改定で変わるため、金額の試算は必ず最新の公式資料と管轄の労働局への確認をもとに行ってください。

当社のAI研修では、助成金の要件に合う時間数・日程の組み方からご相談を承っています。


出典(2026年8月時点。単価・要件・限度時間は変更される場合があります。申請前に必ず公式情報および管轄の労働局にご確認ください)

よくある質問

賃金助成はどう計算しますか?
「1人1コース1時間あたりの単価 × 実訓練時間 × 人数」で計算します。単価はコースと企業規模で変わり、事業展開等リスキリング支援コースの中小企業では1人1時間あたり1,000円が目安です。
研修の拘束時間すべてが助成対象になりますか?
なりません。昼食などの休憩時間を除いたものが総訓練時間数、さらに移動時間や助成対象外のカリキュラムを除いたものが実訓練時間数です。助成の計算に使うのは実訓練時間数です。
土日や夜間に研修をしても賃金助成は出ますか?
原則として所定労働時間外に行われた訓練は賃金助成の対象外です。事前に所定労働時間そのものを変更し書面で通知しているなど例外的な扱いもあるため、日程を決める前に労働局へ確認してください。
助成される時間に上限はありますか?
1人1訓練あたり1,200時間(専門実践教育訓練は1,600時間)が限度とされています。通常のAI研修では上限に達することはまずありません。
助成額を増やす方法はありますか?
賃金要件(訓練修了後に対象者の賃金を5%以上引き上げる)または資格等手当要件を満たすと、賃金助成が1時間あたり200円上乗せされ、経費助成率も上乗せされます。ただし賃上げは継続的な人件費増になるため、助成額だけで判断しないでください。

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