Stella CreationStella Creation
費用相場保守運用発注のコツ

システムの保守・運用費はいくらが妥当か|「初期費用の何%」に幅がある理由

システムの年間保守費は初期開発費の10〜20%が中心ですが、出典によって5%から30%まで幅があります。その理由は「保守」の定義が会社ごとに違うから。内訳の分解方法と、費用を最も左右するSLAの読み方を解説します。

佐野 泰規佐野 泰規株式会社Stella Creation 代表取締役7分で読めます
青い光に照らされたサーバーのクローズアップ
Pexels / panumas nikhomkhai

この記事でわかること

  • 年間保守費は初期開発費の10〜20%が中心。ただし出典により5〜30%と幅があり、率だけでは妥当性を判断できない
  • 幅が生まれる原因は「保守」の定義。運用(監視・バックアップ)と保守(不具合修正・改修)は本来別物で、どこまで含むかが会社ごとに違う
  • 費用を最も動かすのはSLAの対応時間帯。平日9〜18時と24時間365日では、人員体制が違うため月額が変わる
  • 「24時間365日対応」は受付だけで復旧は翌営業日という契約もある。受付と復旧を分けて確認する

システム開発のご相談で、初期費用の話は熱心にされるのに、保守費の話になると急に「まあ、それは追々」となることがあります。気持ちはよく分かります。作る話は楽しいし、保守費は何に払っているのか分かりにくい。

ただ、3年動かせば保守費の累計が初期費用の半分に届くことも珍しくありません。発注前に決着をつけておくべき論点です。この記事では、相場の数字と、その数字を額面どおり受け取ってはいけない理由を整理します。

まず数字:年間で初期費用の10〜20%が中心

調べると、こういうレンジが出てきます。

出典で見かける目安年間保守費(初期開発費に対する比率)
最も多く見る水準15〜20%
やや低めの見立て10〜15%
広めに取った場合10〜30%
運用コストとして見た場合5〜15%

金額でいうと、1,000万円で開発したシステムなら年間150〜200万円が一例として挙げられます。月額ベースでは、中小企業向けの小規模システムで月3〜10万円、中規模で月10〜30万円、大規模になると月30万円以上、というのが目安です。

ここで気づいてほしいのですが、下は5%、上は30%。6倍の開きがあります。 相場表としては、正直あまり役に立ちません。

なぜ、これほど幅があるのか

答えは単純で、「保守」という言葉が指す範囲が会社ごとに違うからです。

同じ「保守費 月10万円」でも、サーバー代と監視と障害対応と月5時間分の改修まで全部入っている会社もあれば、不具合が出たときに直すだけ、という会社もある。前者と後者を「率」で比べても意味がないわけです。

運用と保守は、本来は別物

用語としても分かれています。

  • 運用 — 稼働状況の監視、トラブル対応、定例のアップデートやセキュリティパッチ適用、バックアップと情報管理。日常的にシステムを回し続ける仕事
  • 保守 — 不具合やバグの修正、OS更新に合わせた調整、ユーザーの要望に応じた機能追加。機能を維持・改善する仕事

保守はさらに、適応的保守(OS等の更新への追随)、完全化保守(機能追加や性能向上)、予防的保守(障害を未然に防ぐ)、緊急保守(重大障害への対応)などに分類されます。

見積書ではこれらが「運用保守費 一式」とまとめられがちです。まとめること自体が悪いのではなく、まとめた中身を聞かずに契約するのが問題だと思っています。

見積書の「保守費」を分解する

というわけで、率を見るより先にやるべきは分解です。次の項目のうち、どれが含まれていてどれが含まれていないかを確認してください。

項目確認すること
サーバー・インフラ費クラウド利用料は保守費に含むのか、実費で別請求か
監視死活監視はあるか。異常時に誰がどう気づくのか
障害対応対応時間帯と、着手までの目安時間
問い合わせ対応現場からの質問は何件まで無償か
小規模改修月◯時間まで込み、なのか。都度見積もりか
ライセンス費使っているソフト・サービスの更新料は誰が負担か

特に**「小規模改修が含まれるか」**は後から効きます。含まれていない契約だと、「ボタンの文言を変えたい」程度でも都度見積もりになり、そのやり取りのほうが面倒になる。逆に月◯時間の枠があると、現場は気軽に相談できます。

見積書全般の読み方は見積書の読み方(5つの視点)にまとめました。保守費もこの延長で読めます。

費用をいちばん動かすのはSLAの対応時間帯

分解のなかでも、金額へのインパクトが突出しているのがここです。

平日9〜18時対応なのか、24時間365日対応なのか。この違いは、ベンダー側から見ると「交代要員を常時確保し続けるかどうか」の違いで、その人件費がそのまま月額に乗ります。社内利用の業務システムなら平日日中で足りることが多く、ECサイトやSaaSのように止まると売上が直撃するものは24時間体制が要る、という切り分けが基本です。

中小企業の一般的な目安としては、営業時間内(平日9〜18時)の稼働率99.5%、障害対応の着手まで2時間以内、復旧目標(RTO)24時間以内、といった水準が挙げられます。

「24時間365日対応」の落とし穴

ここは強調しておきたいところです。「24時間365日対応」という表記の実態は、会社によってかなり違います。

夜間は受付だけで、実際の復旧作業は翌営業日の朝から——という契約も普通にあります。つまり**「24時間受付」と「24時間復旧対応」は別物**。深夜2時に電話が繋がることと、深夜2時に直り始めることは、まったく違う話です。

私だったら、契約前にこの一点だけは口頭ではなく書面で確認します。「夜間に障害が起きた場合、御社は何時から作業を開始しますか」。この質問への答えが曖昧な会社は、実際に障害が起きたときも曖昧です。

保守費を抑えたいときに考えること

削り方には、良い削り方と悪い削り方があります。

良い削り方は、要件を落とすことです。24時間対応をやめて平日日中にする。監視の粒度を下げる。使わない機能を減らして保守対象そのものを小さくする。いずれも「何を諦めるか」を自分で決めているので、後で困りません。

悪い削り方は、保守契約を結ばないことです。「壊れたときに都度お願いすればいい」は一見合理的に見えますが、都度対応は優先度が下がりますし、単価も高くなります。何より、作った会社が体制を維持していない状態になりやすい。数年後に改修を頼もうとしたら担当者がいない、というのが典型的な結末です。

保守費込みで3年・5年の総額を見て判断する——業務システムの費用を機能別に分解するでも触れた総保有コストの考え方が、ここでも効きます。

契約前に聞く5つの質問

長くなったので、そのまま使える形にまとめます。

  1. この保守費に、サーバー費・ライセンス費は含まれますか
  2. 障害対応の時間帯と、着手までの目安時間はどうなっていますか
  3. 夜間・休日は「受付」までですか、「復旧作業」まで含みますか
  4. 小規模な改修は月何時間まで含まれますか
  5. 契約期間と、値上げがあり得る条件を教えてください

5つ目を入れているのは、数年後に「体制強化のため」と値上げの相談を受けるケースが実際にあるからです。あらかじめ条件を明示してもらっておくほうが、お互い健全だと思います。

自社のケースで初期費用と保守費がどの程度になるかを先に把握したい方は、作りたいものを入力するとAIが約3分で概算を出すAI見積もりを無料公開しています。相場観をつかむだけの利用でも構いません。


出典(2026年8月時点。相場は調査・出典により幅があります)

よくある質問

システムの保守費用は初期費用の何%が目安ですか?
年間で初期開発費の10〜20%を目安とする情報が多く、1,000万円で開発したシステムなら年間150〜200万円程度が一例です。ただし出典により5〜30%と幅があるため、率よりも「何が含まれているか」で判断してください。
なぜ保守費の相場にこれほど幅があるのですか?
「保守」に含める範囲が会社ごとに違うためです。サーバー費や監視までを含む場合と、不具合修正だけの場合では、同じ「保守費」でも中身がまったく違います。
運用と保守はどう違いますか?
運用は稼働状況の監視・バックアップ・パッチ適用など日常的な管理、保守は不具合の修正や機能改善などシステムの機能維持・改善を指します。本来は別業務ですが、見積書では「運用保守費」とまとめられがちです。
保守費で最もコストを左右するのは何ですか?
SLAの対応時間帯です。平日9〜18時と24時間365日では、ベンダー側が確保する人員体制が違うため月額が大きく変わります。自社に本当に24時間対応が必要かを先に決めてください。
「24時間365日対応」と書いてあれば安心ですか?
実態は契約により異なります。夜間は受付のみで実際の復旧作業は翌営業日開始という契約もあるため、「24時間受付」と「24時間復旧対応」を分けて確認する必要があります。

自社の場合、いくら?

作りたいものを入力するだけで、AIが約3分で概算見積もりを作成します。一般的なSIer相場との比較つき、無料・営業からのしつこい連絡はありません。

AIで概算見積もり(無料) →

あわせて読みたい

ブログ一覧へ戻る